ティッシュ箱
今、目の前にティッシュ箱がある。
何の変哲もないティッシュ箱。
ティッシュが生えている所以外の面全てに「Klllnex」という印字が英字でされている。
多分メーカーの名前だろう。
数日前ににマツモトキヨシで一番安いという理由で買い物カゴにぶち込んだティッシュだったから、名前なんて気にしていなかった(レシート探したら299円だった。本当に一番安いティッシュを選んだのか自分でも怪しくなっている)。
その下にはカタカナでクリネックスと記されている。
カタカナがなかったら、きっと俺は読めなかっただろう。
自分が読めていると思っているものはもしかして読まされているだけなのかもしれない。
よく見ると「Klllnex」の隣に小さくBRANDという文字と、Rが〇でくくられた記号らしきものが記されている。
まとめて読むとクリネックスブランド(まるアール?アールまる?)。
このブログという媒体で読めない物を表現するのは非常に難しい。
クリネックスというカタカナの下にも、小さく英字が印字されている。
「HIGH QUALITY FACIAL TISSUES」
ハイ クオリティ フェイシャル ティッシーズ?
いつも英語を読むときは発音が合っているのか分からないのでモヤモヤする。
中高大の俺は何をしていたんだ。英語に触れる機会が10年もあったというのに。
さらにさらに、同様の印字が面の右下にかなり小さく記されている。
同じ面に同じ事を2回も書くとは。主張が激しい会社だ。
しかし面白いことに、くどさを感じさせない。
大きく書かれているクリネックスは青字。
小さく書かれている方は白字である。
この色の違い、そして文字の大きさの違いが、くどさを感じさせないのだろうか。
言い忘れていたけども、箱は白色を基調としていて、明度にバラつきのある青系の色の線や波模様がコントラストになっている。
箱の側面である4つの面には、底から1cmが濃い青色に塗られている。
さらにその上に1mmぐらいの水色が乗っている。
白色と濃い青色の境界にこの色を配色した理由は何だろうか。
デザイナーの気まぐれ?それとも色で境界を分けることで何か効果がある?
心なしか小さくて白色のクリネックスの印字が目立っているように感じる。
気のせいかもしれないが。
とか考えながら箱を回してみるとどうやら短い方の面は水色と濃い青が基調の色になっていた。クリネックス印字は両方とも白色である。
ちゃんと白が引き立つように配色が施されているんだなぁと感心する。
ティッシュ箱の短い方の面にはおなじみの、箱をつぶす際に分解しやすいようにするためのミシン目が刻まれている。その下には「↑」矢印と「使用後、↑の上部を指で押して外側に広げてください。」と書いてある。
因みに俺はティッシュを使い終わった後、そのミシン目に親指を突っ込むのが密かな楽しみである。ぶちぶちと千切れるあの独特な感触と音は、爽快感すら感じさせる。
というのはどうでもいい。
切り取り線付近に謎の数字が振ってある。
「29048265」
何だこれは。製造番号か何かだろうか。
世の中のありとあらゆる商品には得体のしれない数字が沢山振ってある。
小学生の頃、給食で出たヨーグルトの底面にも、謎の「4」とか「1」とか「2」とかの数字が書いてあった(その数字の値が大きい奴が「お前何番?え4番?俺は1番!いえぇぇい勝ったぁ~!」という謎のマウンティングを取ってきていたことを思い出した)。
左下の方には「360枚(180組)」と分かりやすくティッシュの枚数が書かれている。
いつも残り枚数なんて気にせずに使っているので、知ってもあまり意味はないが。
無造作なしわしわが集まって不自然な形を保っているティッシュが一枚だけ箱から出ている。
一枚とってみる。
新しいティッシュが釣られて生えてきた。
そしてそれが不自然な形を保って、飛び出たままになる。
この形を固定しているのは、ティッシュの取り出し部についたプラスチックのビニールのような素材だ。このビニールのすごい所は、ティッシュ千切れさせることなく取り出せるようにしていること、飛び出たティッシュを垂直方向に保とうとする機能があることだ。
ティッシュをとっても次のティッシュが生えてくる構造、ティッシュを取りやすくするビニール。
最初にこの構造を考えた人は本当にすごいと思う。
というより、さまざまな試行錯誤があって現在のティッシュになっているのだろう。
先人たちがきっと何百時間もかけて開発したんだろう。
それを俺がたったの299円で使用できるのは、控えめに言って最高の時代に生まれたと思う。
ティッシュ箱を裏返してみる。
普段はあまり見ることのないティッシュ箱の裏側。
意外にいろいろな事が書いてある。
クリネックスのロゴ、「ふれるたび、あなたにいいこと」というフレーズ、使用後のリサイクル方法、クリネックスが開発したトイレットペーパーの宣伝、壁に引っ掛けるための穴をあける「push」と書かれた箇所、壁に掛ける為の別売り商品「マグネットバーくっつくん」を購入する画面に飛べるQRコード、「マグネッバーくっつくん」の使用上の注意、寸法(たて188mm×よこ228mm)、日本製のロゴ、「日本製紙グループ日本製紙クレシア株式会社」という会社名とその住所、お客様相談係の電話番号とその受付時間、登録商標のソース、、、
情報量が思いのほか多かった。
もし自分がティッシュ箱を見ずに、「ティッシュ箱の裏面に書かれていること言ってみろ」と言われたら、間違いなく全部は答えられないどころかほとんど答えられないだろう。
こんなに身近で、毎日のように使っているティッシュでも、すごい工夫や、分からない情報がたくさん詰め込まれている。
そういえばなんでティッシュは四角何だろうか。
ティッシュの素材って何だ。ティッシュ箱の素材って何だ。ビニール素材の原料ってなんだ、箱への印字はどうやっているんだ、ミシン目はどうやって入れるんだ、それぞれどういう製法で作っているだ、、、
圧倒的に知らないことだらけだ。
たまにこういうこと考えるの楽しいかも。
終わり
(所要時間140分)